ダイエットをしているとどうしても気になるのが「カロリー」。少しでも低カロリーなものにする為に「脂質制限ダイエット」で揚げ物等を我慢した経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。中には「油=体に悪いもの」というイメージを持たれている方もいらっしゃるかもしれません。

確かに油は1g9kcalと高カロリーなので、過剰に摂り過ぎるとエネルギーとして消費されずに中性脂肪として蓄えられてしまいます。しかし、脂質は三大栄養素のひとつで、少量で力を発揮できるとても効率の良いエネルギー源となりますし、脂質が不足すると肌荒れ体力低下等の原因にもなります。

油には様々な種類があり、控えた方が良い油から摂取することで中性脂肪を減らし生活習慣病を予防する効果がある油まで、その効果は様々です。良質な油を見極めて体に必要な油を摂取し、若々しい姿をキープしていきましょう。

脂質を摂取することの重要性

油は摂取しすぎると体内で分解されず、余った脂肪酸が血液内に留まり中性脂肪になったり、動脈硬化や心筋梗塞等の疾患の原因にもなります。しかし、車はガソリンが無いと動かないように、人間も油を摂らないと体内で効率的にエネルギーを生成できず、体の不調体力低下等の原因になってしまいます。また、潤いが失われる為肌の乾燥便秘の原因等、美容にとっても悪影響を及ぼします。さらに緑黄色野菜に多く含まれるビタミンAビタミンEビタミンDは、油と一緒に摂取するとビタミンの吸収率が上がるので、むしろ適度な脂質の摂取は必須と言えるでしょう。

油の種類を知ろう

油の主成分は「脂肪酸」でできています。脂肪酸は大きく分けて「飽和脂肪酸」「不飽和脂肪酸」「トランス脂肪酸」に分かれており、種類によってその効果も様々です。不飽和脂肪酸はさらに「一価不飽和脂肪酸」「多価不飽和脂肪酸」に分けられ、その中でも「多価不飽和脂肪酸」は体内で生成できず食べ物等から摂取する必要がある為「必須脂肪酸」と呼ばれています。
では、それぞれの特徴を見ていきましょう。


 

■飽和脂肪酸

・主に含まれているもの…肉、ラード、バター等
主に動物性の脂質に多く含まれています。植物油の中ではココナッツオイルやパームオイル等に含まれています。酸化しにくいのが特徴で、適切な量を摂取すれば効率の良いエネルギー源となりますが、過剰に摂り過ぎると血液中の中性脂肪やコレステロールを上げ肥満の原因となったり、動脈硬化や心疾患のリスクを上げると言われています。普段から脂身の多い肉は量を控えるなど意識して、過剰な摂取を控えるように心がけましょう。


 

一価不飽和脂肪酸(オメガ9[n-9系])

・主に含まれているもの…オリーブオイル、アーモンド等
オレイン酸を多く含むオメガ9[n-9系]脂肪酸です。オリーブオイルやアーモンドなどに多く含まれており、悪玉コレステロールを減らす効果や、心疾患のリスクを軽減する効果があります。

オメガ9(n-9系
オリーブオイル、米油、なたね油などに多く含まれる。体内でも生成できるが良質な油が多いので積極的に摂り入れたい油のひとつ。


 

多価不飽和脂肪酸(オメガ3[n-3系]、オメガ6[n-6系])

・主に含まれているもの…青魚、ナッツ、えごま油、亜麻仁油等
体内で生成することができないので食事などで摂り入れる必要があります。オメガ3、オメガ6共に体内で生成できない必須脂肪酸ですが、特にオメガ3は日本人に不足しがちな必須脂肪酸なので毎日摂り入れたい油です。

オメガ3(n-3系
アマニ油やえごま油、青魚に多く含まれる。EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)、αリノレン酸と呼ばれる成分からできており、中性脂肪の合成を抑え、代謝を上げる効果がある。血行促進効果や肌や髪のハリを良くする等美容にも嬉しい脂肪酸。

オメガ6(n-6系
サラダ油やコーン油、大豆油などに多く含まれる。リノール酸やアラキドン酸等を含み、過剰に摂取しすぎると飽和脂肪酸と同様に中性脂肪の原因となる。また、油の種類によってはトランス脂肪酸が含まれているものもある。

■トランス脂肪酸

・主に含まれているもの…マーガリン、ショートニング等
マーガリンやショートニング等、スーパーで手軽に手に入る加工油に多く含まれております。そのほとんどが人工的に作られており、インスタント食品やレトルト食品等にも使用されています。ショートニングはお菓子やケーキ等に使用されていることが多いです。トランス脂肪酸には悪玉コレステロールを増やしたり、心疾患等を引き起こす可能性があると報告されている為、過剰摂取が問題視されています。

毎日摂りたい必須脂肪酸「オメガ3」

オメガ3もオメガ6も体内で生成できない必須脂肪酸ですが、特に現代の日本人はオメガ6が過剰摂取になり、オメガ3は不足しがちな傾向にあると言われています。オメガ3とオメガ6にはそれぞれ正反対の役割を持っており、オメガ6は体内の炎症を促進したり血液を凝固させる作用、反対にオメガ3には炎症を抑え血液を固まりにくくするという作用を持っています。その為オメガ6のみ過剰に摂取すると心筋梗塞の原因になったり、オメガ3を過剰に摂取すると怪我をしたときに血出血が止まりにくくなってしまいます。

オメガ6とオメガ3のバランスは「2:1」が理想とされていますが、多くの日本人は圧倒的にオメガ3が足りていません。その原因は日常的に魚を食べる習慣が減ってしまったからだと言われています。バランスを保つ為には普段から意識してオメガ6の摂取を控えたり、オメガ3を積極的に摂り入れ補う必要があります。

魚は良質な油の宝箱!
青魚等に含まれる「EPA(エイコサペンタエン酸)」や「DHA(ドコサヘキサエン酸)」、「α-リノレン酸」は不飽和脂肪酸の中でも良質な油とされるオメガ3脂肪酸の代表的な脂肪酸で、悪玉コレステロールや中性脂肪を減らし、血液をサラサラにする効果があります。また、がんやアレルギー、認知症をを予防するという効果も報告されています。
反対に動物の肉等に含まれる飽和脂肪酸は、効率の良いエネルギー源としては優秀ですが、摂り過ぎると余った飽和脂肪酸が中性脂肪に変わってしまいます。運動をしてエネルギーを消費したり、適度に摂取する分には問題有りませんが、同じ油でも食材が変わればこんなに効果が変わるんですね!

とはいえ普段魚を食べる習慣が無い方が毎日オメガ3を摂取するのは難しいかもしれません。そこで近年注目されているのが「えごま油」や「亜麻仁油」。これらの油も魚油と同じ「オメガ3脂肪酸」に属しており、魚油と同様に中性脂肪を減らす効果などがあります。小さじ1杯1日分のオメガ3を摂取できるので、普段魚を食べない方は是非毎日摂り入れてほしい油です。

えごま油と亜麻仁油どちらがオススメ?

えごま油はシソ科の「えごま」から抽出され、亜麻仁油はアマ科の「アマニ」から抽出されます。えごま油は癖が無く使いやすいのが特徴ですが、酸化が進むと魚臭いと感じる方が多いようです。亜麻仁油は独特な香りが特徴で、好き嫌いは分かれるにおいと言えるでしょう。オメガ3の含有量はえごま油の方が若干多くなっていますが、栄養素に大きな違いはありませんので基本的には香りでどちらを使用するか決めていただいてかまいません。商品の品質によっても香りは変わってきますので、ご自身が毎日継続しやすいものを選ぶといいでしょう。

えごま油」や「亜麻仁油」は熱や光に弱く、特に加熱してしまうとすぐに酸化してしまうので、炒め物などには使用せず生のまま使用しましょう。緑黄色野菜に多く含まれているビタミンAは油と一緒に摂ることで吸収率がアップするので、特にサラダにかけたり、ドレッシングとして使用するのがオススメです。温かい飲み物に加えてすぐに飲む分には問題ありませんので、スープやお味噌汁に加えて飲むこともできますよ!

注意してほしい「トランス脂肪酸」「パーム油」

トランス脂肪酸はマーガリンやショートニング、サラダ油等の植物油を高温に加工する工程で発生する脂肪酸の一種です。加工食品に使用されているものは人工的に作られたものが多いですが、牛肉や乳製品に含まれている場合もあります。トランス脂肪酸は体への悪影響を報告されており、アメリカ等ではトランス脂肪酸の使用を禁止されています。過剰に摂取すると心筋梗塞動脈硬化等の疾患になる可能性が高くなり、肥満等の原因にもなってしまいます。

サラダ油やキャノーラ油に含まれるトランス脂肪酸は微量なので、バランスの良い食生活を送っていれば過剰摂取になる心配はありません。しかし、スナック菓子チョコレート菓子ケーキレトルト食品等の加工食品には、マーガリンショートニング等が大量に使用されており、食べ過ぎるとトランス脂肪酸の過剰摂取に繋がってしまいます。原材料に「ショートニング」「植物油100%」などと表示してあれば、トランス脂肪酸が使用されている可能性が高いので、できるだけ控えるようにしてください。


 

また、「パーム油」にも注意が必要です。パーム油はアブラヤシの実から摂れる油脂肪酸の約半分が飽和脂肪酸でできています。パーム油と聞くと馴染みが無いかもしれませんが、トランス脂肪酸と同様にポテトチップスチョコレート菓子アイスマーガリンカップ麺等幅広く使用されています。パッケージには「植物油脂」と表示されているので気付かない方も多いかもしれませんね。

パーム油は固めても溶かしても使える万能な油で、チョコレート等に加えるとなめらかなくちどけになり、酸化しにくくサクッと仕上がるので揚げ物にも使用されるなど、とても使いやすい人気の油です。それゆえ普段から加工食品ばかり食べている人はパーム油の過剰摂取になることが多く、悪玉コレステロールの増加心筋梗塞糖尿病の原因になるなど、トランス脂肪酸と同様の体への悪影響を及ぼします。

どちらも少量であれば気にする必要はありませんが、どこにでも使われているので無意識のうちに過剰摂取になりがちです。普段から外食や加工食品は控え手料理を食べるよう心がけたり、使用する油を良質なものに変えるなどして、できるだけトランス脂肪酸やパーム油を控えるようにしましょう。

サラダ油、キャノーラ油は体に悪いの?

そもそもサラダ油とキャノーラ油の違いは何なのでしょうか。

サラダ油の名前の由来は、そのままサラダにも使えるという意味で日清オイリオが「日清サラダ油」という商品名で発売したのが始まりです。主になたねコーンなどを原料とし作られています。2種類以上の原料をブレンドしたものは「調合サラダ油」と呼ばれます。
安価で手軽に手に入るので色んな調理に使われているサラダ油ですが、実はサラダ油は熱に弱く過熱するとリノール酸が反応して酸化してしまいます。揚げ物や炒め物よりは、その名の通りサラダ等ドレッシングにのまま使用するのがオススメなんですね。

一方キャノーラ油はなたね油の原料であるアブラナを改良した品種から作られています。厳密にはサラダ油の一種なのですが、サラダ油が様々な原料からできているのに対し、キャノーラ油はアブラナ科の植物のみに絞られているのが特徴です。ただし、サラダ油は精製加工されているもの限定なので、精製加工されていないキャノーラ油はサラダ油には含まれません。
サラダ油との大きく異なるのは、キャノーラ油は酸化に強いオレイン酸を多く含んでいるという点です。揚げ物や炒め物に向いているので加熱調理に使用するのであればキャノーラ油がオススメです。

サラダ油、キャノーラ油共に必須脂肪酸に含まれるオメガ6の脂肪酸ですが、これらの油は低温でも固まらないように加工精製されています。原材料を絞ったままの油は純度が高い為温度が低いと固まってしまうのですが、サラダ油やキャノーラ油は冷えても使いやすいように加工され、その過程で加熱処理がされる為、少量ではありますが「トランス脂肪酸」が発生してしまうのです。適切な量を使用している分には問題はありませんが、毎日揚げ物を食べている方やその他の加工食品等でトランス脂肪酸を日常的に摂取している方は注意が必要です。長い目で考えると少々高くても精製されていない油を使用した方がいいでしょう。

※遺伝子組み換えに注意!
遺伝子組み換えの油は種類に関わらず健康被害に関する研究が出ています。できるだけ遺伝子組み換えでないものを選ぶようにしましょう。日本では遺伝子組み換え作物が栽培されていない為、国内原料100%の油は非遺伝子組み換えなので安心ですよ。

サラダ油の代わりに!ごま油の効果

サラダ油やキャノーラ油に含まれるトランス脂肪酸は少量ではありますが、気になる場合はその他の良質な油を使用するといいでしょう。中でもオススメなのはごま油!同じオメガ6であるグレープシードオイルコーン油は、化学溶剤抽出や高温加熱加工で作られているものが多く、サラダ油と同様にトランス脂肪酸等が含まれている可能性があります。

しかし、ごま油はその名の通り胡麻からそのまま絞って作られた油です。余計な加工をしていないので純度の高いオイルのみを使用することができます。香ばしい香りが特徴で、この香りが食欲をそそるという方もいらっしゃるかもしれませんね。サラダ油と同様に必須脂肪酸であるリノール酸オレイン酸が豊富に含まれており、シミしわを防ぐ効果のあるセサミンビタミンEカルシウム等たくさんの栄養が豊富に含まれています。また、抗酸化作用が高く酸化しにくいので、炒め物などの加熱調理にも向いています。

とはいえ、その特徴的な香りから中には使いにくい料理もあるかもしれません。ごま油に変えるのではなく、オリーブオイルやサラダ油と組み合わせることで、無理なくサラダ油の使用頻度を減らしていきましょう!ごま油でもオメガ6の摂り過ぎは肥満等の原因となってしまいます。オメガ3とのバランスを考えて摂取するようにしてくださいね。

オメガ6とオメガ9を上手く組み合わせよう!

一価不飽和脂肪酸の種類であるオメガ9は、体内でも生成できるため必須の脂肪酸ではありません。しかし、オレイン酸を豊富に含み酸化しにくいのが特徴で、悪玉コレステロールを減らし善玉コレステロールを増やす効果があります。その他にも心筋梗塞脳梗塞等を予防し、生活習慣病の改善に役立つといわれています。加熱にも強い為様々な料理に使用することができますよ。
オメガ6の代わりに使用し、オメガ3とオメガ6のバランスを調整していきましょう。

オメガ9の代表「オリーブオイル」

オメガ6の中でも代表的な油が「オリーブオイル」です。オリーブオイルはオリーブの果実を絞ってできる油で、一般的に「ピュアオリーブオイル」と「エキストラバージンオリーブオイル」の2種類に分かれています。

エキストラバージンオリーブオイル」はオリーブの実を絞ってできたオイルのことで、様々な項目で評価され認められたもののみに与えられる名称です。栄養価が高く、味や風味も良いのでスープに入れたり、そのままサラダにかけて食べるのがオススメです。

対して「ピュアオリーブオイル」は、絞ったオイルを精製し香りや味のない油の状態にしたものに、エキストラバージンオリーブオイルをブレンドしたものを指します。エキストラバージンオリーブオイルの量には基準が無いので、ピュアオリーブオイルでも風味豊かなものから、あまり風味を感じられないものまであります。オレイン酸等の脂肪酸の量は変わりませんが、ポリフェノール等の栄養価エキストラバージンオリーブオイルの方が多くなっています。

栄養価や純度で言えばエキストラバージンオリーブオイルの方が勝っていますが、エキストラバージンオリーブオイルは一般的にピュアオリーブオイルよりも高価なので、栄養をそのまま摂取したい場合や香りを楽しみたい場合はエキストラバージンオリーブオイルを、炒め物や揚げ物に使う場合はピュアオリーブオイルを使う等、分けて使用するのがオススメです。また、オリーブオイルの香りが風味が苦手な方や、風味を生かさず色んな加熱料理に使用したい場合はピュアオリーブオイルを使用するといいでしょう。

オリーブオイルに多く含まれるオレイン酸には皮膚を柔らかくする効果もあるので、角質が原因の肌のごわつきや乾燥による小じわを改善し、美肌への効果も期待できますよ!また、オリーブオイルに含まれているポリフェノールには高い抗酸化作用があり、動脈硬化等の疾患を予防するという研究結果が報告されています。その他にも抗菌作用があるので、風邪の予防にも役立つという、美容にも健康にも嬉しい油です。

様々な嬉しい効果があるオリーブオイルですが、デメリットとして冷やすと白く固まるという特徴があります。オリーブオイルは果実由来のフレッシュな油なので、例えばドレッシングを作って冷蔵庫に入れた場合や、長時間寒い場所へ置いておくと固まってしまい上手く使えないことがあります。冷蔵庫には入れず涼しい場所で保管し、できるだけ早く使い切るようにしましょう。固まった状態からすぐに使いたい場合は40度前後のぬるま湯で湯煎してあげましょう。

また、オリーブオイルは光にあてると酸化を促進させてしまいます。光を遮断する為に濃い色の瓶が使われている商品が多いですが、鮮度を保つために直射日光や蛍光灯の光が当たらないところで保管しましょう。

まとめ

日常的にいろんな場面で使用されている油は少し意識するだけで真逆の効果を発揮します。加工食品を減らして体に悪影響を及ぼす油を控えたり、ちょい足しで足りない必須脂肪酸を補ったり、普段使用する油を栄養価の高い油に切り替えたり…そうした小さな積み重ねが5年後10年後の自分の健康に繋がっていきますよ。一度にすべてを切り替える必要は無いので、まずはオメガ3の油を毎日摂るようにする等簡単なものから試してみましょう。